ホーム›うなぎ図鑑›ひつまぶし
Encyclopedia / Dishes

ひつまぶし名古屋・東海

刻んだうなぎの蒲焼をご飯にまぶし、一杯ごとに食べ方を変えて四杯で食べきる料理です。名古屋の名物として知られていますが、浜松にもあります。

名古屋めし浜松では7軒薬味・だし付き
写真はイメージ

ひつまぶしとは、刻んだうなぎの蒲焼をご飯にまぶし、一杯ごとに食べ方を変えながら四杯で食べきる料理です。名古屋の名物として知られていますが、名古屋だけのものではありません。

名前の由来と、登録商標であること

ひつまぶしという名前は、おひつに入ったご飯に刻んだ蒲焼をまぶす作り方から来た、という説が広く知られています。ただし由来には別の説もあり、決着していません。「ひつまぶし」はあつた蓬莱軒の登録商標ですが、登録されているのは食品の区分で、飲食物の提供については拒絶査定になっています。

名前はどこから来た?

おひつに入ったご飯に、刻んだ蒲焼をまぶす。この作り方がそのまま名前になったという説が広く知られています。ただし由来には別の説もあり、どれが正しいかは決着していません。当サイトでは、一つの説を正解として断定しないことにしています。

「ひまつぶし」ではありません。字面が似ているので読み違えられることがありますが、関係のない言葉です。

「ひつまぶし」は、あつた蓬莱軒の登録商標です

名古屋のあつた蓬莱軒は、公式サイトでこう書いています。

「ひつまぶし」は細かく刻んだ鰻の蒲焼をご飯にまぶした料理であり、これこそが「あつた蓬莱軒」の登録商標です。あつた蓬莱軒 公式サイト(2026年8月28日確認)

ここで見落とされやすいのが、何の区分で登録されているかです。「ひつまぶし」の商標登録は第29類と第30類、つまり食品としての区分でした。飲食店が料理として出す行為にあたる第43類(飲食物の提供)についても出願されましたが、そちらは拒絶査定となり、審判でも維持されています(不服2006-25186)。特許庁は、「ひつまぶし」は名古屋の鰻屋の大半が品書きに載せている料理名なので、店を見分ける目印としては働かない、と判断しました。

つまり店内で出す料理の名前については、第43類の登録商標権は生じていません。ただし食品としての登録は生きているので、持ち帰りの弁当や商品として売るときは話が別です。それでも浜松では別の呼び方をしている店のほうが多く、その理由は店に聞かないと分かりません。ここでは呼び方の記録にとどめます。

登録番号(第1996631号)・区分・審判の経緯と審決の引用は、アース国際特許商標事務所と Toreru Media の解説を参照しました(いずれも2026年9月2日確認)。権利者は株式会社蓬莱軒です。料理名としての使用がどこまで許されるかは個別の事情によります。このページは法律上の助言ではありません。

四杯で一巡する食べ方

ひつまぶしは、おひつの中を十字に四等分してから食べ始めます。一杯目はそのまま、二杯目は薬味をのせて、三杯目はだしをかけて茶漬けに。四杯目は、その中でいちばん良かった食べ方でもう一度食べて締めます。三等分では締めの一杯がなくなるので、四つに分けるのが要です。店に案内があればそちらが優先です。

一杯目 そのまま食べる

四分の一を茶碗によそって、何も足さずに食べます。うなぎとタレとご飯だけの状態を先に知っておくためです。ここを飛ばすと、薬味やだしを足したときに何がどう変わったのか分からなくなります。

二杯目 薬味をのせる

ねぎ、わさび、刻み海苔。店によって山椒や大葉が付くこともあります。わさびは最初から全部のせず、少しずつ足してください。一杯目との差を確かめるのが目的なので、一気に足すともったいない。

三杯目 だしをかける

薬味をのせたまま、だし(店によっては煎茶)を回しかけます。茶漬けにすると脂が流れて、同じうなぎがまったく別の食べ物になります。だしは注ぎすぎないほうがいい。ご飯が浸る程度で十分です。

四杯目 いちばん良かった食べ方で締める

最後の四分の一は、三通りのうち自分が一番気に入ったやり方で食べます。決まりはありません。この四杯目のために三等分ではなく四等分する、と考えると分かりやすいはずです。

ご飯とうなぎは混ぜる?

おひつの中でよそう前に軽く混ぜる店と、そのままよそう店があります。どちらでも構いません。店の人が最初に食べ方を説明してくれることが多いので、迷ったらそれに従うのが確実です。

名古屋以外でも食べられる?

浜松の26軒を調べたところ、まぶし系の料理を出していたのは7軒でした。ただし呼び方が揃っておらず、「ひつまぶし」をそのまま料理の名前にしているのは2軒だけ。残りは「まぶし」「まぶし茶漬け」です。焼き方でも決まらず、関東風4軒・関西風3軒と、むしろ関東風のほうが多くなっています。

浜松では「まぶし茶漬け」と呼ぶ店があります

内訳は次のとおりです。呼び方と焼き方、どちらの出典で確認できたかを並べました。

店名 品書きでの呼び方 焼き方 確認できた出典
炭焼鰻 はじめ ひつまぶし 関西風 公式・振興会
うなぎ食事処 浜乃木 鰻ひつまぶし/鰻桶まぶし 関東風 公式
浜名湖うなぎ 丸浜 まぶし茶漬け 関東風 公式・振興会
浜松うなぎ処 鰻昇亭 下江店 ひつまぶし風うな重 関東風 公式
うなぎ・和食処 松の家 うなぎまぶし 関西風 振興会
関西風炭焼き 三方原 うな吉 うなぎまぶし茶漬け 関西風 振興会
本場備長炭火焼 うな炭亭 まぶし茶漬け/特まぶし 関東風 振興会

出典は、浜松鰻料理専門店振興会の加盟店ページに載っている品書き(2026年8月28日集計)と、各店の公式サイトの品書き(2026年8月29日取得)です。焼き方の分類は振興会の表示に従っています。

「ひつまぶし」をそのまま料理の名前にしているのは、7軒のうち2軒だけです。はじめの「ひつまぶし」と、浜乃木の「鰻ひつまぶし」。鰻昇亭は「ひつまぶし風うな重」で、「風」が付きます。残りの4軒は「まぶし」「まぶし茶漬け」で、「ひつまぶし」とは名乗っていません。

関東風と関西風で違う?

調べる前は「刻んでも身が崩れないのは、蒸さない関西風だからではないか」と考えていました。数えると関東風4軒・関西風3軒で、むしろ関東風のほうが多い。蒸してやわらかい関東風でも、刻んでだしをかける食べ方は成立しています。焼き方そのものの違いはうなぎの関東風と関西風の違いに、同じ数え方で調べた白焼きの結果はそちらのページに書いています。

浜松の26軒の内訳は関東風19軒・関西風7軒(関西式を含む)なので、割合にすると関東風は19軒中4軒、関西風は7軒中3軒。焼き方でまぶしの有無が決まるわけではありません。浜乃木は自店の白焼きを「せいろでふんわりと蒸した」と説明していて、蒸す店がまぶしも出しています。

価格の目安

公式サイトの品書きで確認できた一人前のまぶしは、4,000円から4,900円でした。二人以上で分ける大きさの品やコース仕立てにすると6,000円を超えます。うな重と比べて特に安いということはありません。

店名 品書きの表記 価格 形
浜名湖うなぎ 丸浜 でしこ まぶし茶漬け【蒲焼3/4尾】 4,000円 一人前
炭焼鰻 はじめ ひつまぶし 4,600円 一人前
うなぎ食事処 浜乃木 鰻ひつまぶし(薬味セット・肝吸・香の物) 4,900円 一人前
浜松うなぎ処 鰻昇亭 下江店 華 -はな-(ひつまぶし風うな重) 6,400円 コース仕立て
うなぎ食事処 浜乃木 鰻桶まぶし 9,600円 2〜3名で分ける

出典は各店の公式サイトの品書きで、いずれも税込と明記されている価格です(2026年8月29日取得)。振興会の掲載では丸浜が3,300円、はじめが3,700円。公式サイトの現行価格は4,000円と4,600円で、どちらも食い違います。ただし振興会側は丸浜が2022年8月1日時点で税表記なし、はじめが2019年10月時点の税抜。公式はいずれも税込です。税の扱いも時点も揃っていないので、差額をそのまま値上げ幅とは読めません。このページは公式サイトの値を採りました。

振興会の掲載にしかない店

公式サイトの品書きを読み取れなかった3軒は、振興会の掲載で補います。松の家は公式サイトがありますが品書きのページが古い形式で中身を取れず、うな炭亭とうな吉は品書きを載せた公式ページを確認できませんでした。掲載時点が古いので、現在の価格とは限りません。

店名 品書きの表記 価格 税表記 掲載時点
うなぎ・和食処 松の家 うなぎまぶし 4,000円 税別 2020年7月
本場備長炭火焼 うな炭亭 まぶし茶漬け 4,000円 税込 2023年11月
本場備長炭火焼 うな炭亭 特まぶし 5,700円 税込 2023年11月
関西風炭焼き 三方原 うな吉 うなぎまぶし茶漬け 4,950円 表記なし 2025年5月

出典は浜松鰻料理専門店振興会の加盟店ページに載っている品書きです(2026年9月2日に各店のページを取得)。税表記は店によって違うので、列に分けました。そのまま足し引きできる数字ではありません。訪問前に店へご確認ください。

うな重・うな丼との違い

同じうなぎのご飯ものですが、切るかどうかと、食べ方が決まっているかどうかが違います。うな重とうな丼のほうは、差をつけているのが器ではなくうなぎの量だ、というところまで調べました。

ひつまぶし うな重 うな丼
うなぎ 刻んでまぶす 切らずにのせる 切らずにのせる
器 おひつ+取り茶碗 重箱 丼
薬味・だし 付く(前提) 山椒のみが多い 山椒のみが多い
食べ方 四杯で変えていく 決まりなし 決まりなし

うな重とうな丼を分けているのは、器そのものではなく、のっているうなぎの量です(同じ量なら重でも丼でも同額の店があります)。ひつまぶしだけが「食べ方の手順ごと出てくる料理」だと考えると、区別しやすくなります。

食べに行く前に何を確かめる?

ひつまぶしは仕込みの都合で、提供に条件がつく店があります。浜松の7軒では、丸浜のまぶし茶漬けが平日限定、うな炭亭は夜の部が土日だけ、浜乃木は夜の営業がありません。予約は丸浜を除く6軒が可でした。駐車場も丸浜だけが「なし」なので、車で行くなら先に調べておくほうが確実です。

昼だけ、平日だけ、という条件がつくことがあります

ひつまぶしは仕込みの都合で、提供に条件がつく店があります。浜松の7軒を調べたところ、丸浜の「まぶし茶漬け」は公式サイトの品書きに平日限定と書かれていました(繁忙期を除く、とも添えてあります)。うな炭亭は夜の部の営業が土日だけ、浜乃木は夜の営業がありません。

また、はじめは公式サイトで「混雑している場合は、鰻が品切れ次第営業終了とさせていただきます」と告知しています。混みそうな日は、開店時間に合わせて動くほうが確実です。

予約はできる?

浜松の7軒では、丸浜を除く6軒が予約可でした。丸浜は振興会の掲載に予約可の表示がありません。駐車場も丸浜だけが「なし」です。浜松駅前のビルの中にある店なので、車で行くなら周辺の駐車場を先に調べておくほうが確実です。

営業時間・定休日・予約可否は変わります。各店の最新の確認日つきデータは店舗ページに載せています。

発祥をめぐる複数の説

ひつまぶしの発祥には、名古屋で生まれたとする説と、三重県の津で生まれたとする説があり、決着していません。いつ今の形になったのかも資料によって食い違います。あつた蓬莱軒は明治時代に確立されたと書き、特許庁の審決は「戦後の食糧難の時代に鰻のこまぎれを活用して考案された料理」と認定しています。

いつ今の形になったのかも、資料によって食い違います。あつた蓬莱軒は公式サイトで「薬味を乗せたりお茶漬けにしたりといった愉しみ方は明治時代に確立され」と書いています(2026年8月28日確認)。一方、上で触れた商標の審決で特許庁は、「ひつまぶし」を「戦後の食糧難の時代に鰻のこまぎれを活用して考案された料理」と認定しています。

店の言い分と行政の判断が、半世紀以上ずれている。どちらかが嘘をついているというより、「ひつまぶし」という言葉が指すものが時期によって変わってきたと考えるほうが自然です。当サイトはどちらかを正解として断定しません。

よくある質問

ひつまぶしの正しい食べ方の順番は?
四等分して、一杯目はそのまま、二杯目は薬味、三杯目はだしをかけて、四杯目は好きな食べ方で締めます。ただし店ごとに案内が違うことがあるので、説明があればそちらが優先です。
なぜご飯を四等分するのですか?
三通りの食べ方を試したうえで、最後にもう一杯、気に入ったやり方で食べるためです。三等分だと締めの一杯がなくなります。
お茶漬けは、お茶とだしのどちらですか?
店によって違います。だしを出す店と煎茶を出す店の両方があり、どちらかが間違いということはありません。
うな重とは何が違うのですか?
うな重はうなぎを切らずに重箱のご飯にのせます。ひつまぶしは刻んでご飯にまぶし、おひつで出します。食べ方を変えながら食べきる前提の料理という点も違います。
名古屋以外でも食べられますか?
食べられます。浜松の26軒のうち7軒が品書きに載せていました(2026年8月29日時点)。ただし「まぶし茶漬け」など別の名前になっていることが多く、「ひつまぶし」をそのまま品名にしているのは2軒です。
「ひつまぶし」は商標なのですか?
あつた蓬莱軒の登録商標です。ただし登録されているのは食品の区分(第29類・第30類)で、飲食物の提供(第43類)の出願は拒絶査定になり、審判でも維持されました。飲食店が料理名として使うことに、第43類の権利は生じていません。ただし食品の区分の登録は生きているので、商品名やパッケージでの使い方は別に考える必要があります。浜松では別の呼び方をしている店のほうが多くなっています。