うなぎの温め直しは、フライパンに酒を少し入れて蓋をする方法がいちばん失敗しません。ただし、買ったうなぎが関東風か関西風かで、向いている温め方は変わります。
温め方を分けるのは「蒸してあるか」
うなぎの温め直しとは、冷めて固まった脂と身をほぐし、皮の食感を戻す作業です。器具別のやり方を並べる前に、見るべきものがあります。手元のうなぎが蒸してあるか、蒸していないか。蒸した関東風は水分を逃がさない温め方、蒸さない関西風は皮を立て直す温め方が向きます。ここで最適解が分かれます。
浜松市の公式サイト「はままつフードパーク」は、二つの焼き方をこう定義しています。
背開きにして白焼きにし、それを蒸してからタレをつけてかば焼きにする「関東風」と、腹開きにして白焼きにしたものを蒸さずにかば焼きにする「関西風」があります。出典:浜松市「はままつフードパーク」(2026年8月28日確認)
関東風は、水分を逃がさない温め方が向きます
蒸してある関東風は、身に水分を多く含んでやわらかく仕上がっています。この水分が抜けるとパサつき、身が崩れます。だから蓋をする、ラップをかける、湯煎にする。水分を閉じ込める方向の温め方と相性がいい、という理屈です。
ここは工程から導いた推論で、うなぎめぐりが関東風と関西風を同じ条件で温め比べて確かめたものではありません。実際に比べて、結果が違えばこの記述を書き換えます。
逆に、直火で長く炙るのは向きません。表面が乾く前に中まで温まらず、乾かしてしまいがちです。
関西風は、皮を立て直す温め方が向きます
蒸していない関西風は、皮が香ばしくパリッとしているのが持ち味です。冷めると、その皮がしんなりします。ここを戻すには、トースターやグリルで表面に直接火を当てるほうが理にかなっています。
関東風ほど身がやわらかくないので、多少強く加熱しても崩れにくい。皮の食感を取り戻すことを優先できます。
※焼き方による向き不向きは、蒸しの有無という調理法の違いから導いた考え方です。当編集部で温度や時間を計測して比較したものではありません。実測できたら、この記事を更新します。
どちらか分からないときの見分け方
包装に書いていないことのほうが多いはずです。見分ける手がかりは二つあります。
- 背中に切れ目があるか/背開きなら関東風、腹開きなら関西風の可能性が高い
- 産地と店の所在地/おおまかには東日本が関東風、西日本が関西風です。ただし浜松のように両方が混在する土地もあります
分からなければ、次に説明するフライパンの方法にしてください。どちらでも大きく外しません。買った店の焼き方を知りたければ、地域から探すで店舗ページを見てください。焼き方を一軒ずつ載せています。
温める前に何をする?
温める前に、表面のタレをぬるま湯で流してください。そのまま火にかけると、身が温まる前にタレの糖分が焦げて苦みが出ます。こすらず流すだけで十分で、身の味は落ちません。洗ったら水気を軽く拭き取り、酒を少しふる。蒸気が回って身がほぐれます。タレは温め終わってから、最後にかけ直します。
タレは洗い流す?
スーパーで買った蒲焼は、タレがたっぷりかかっています。このまま温めると、タレの糖分が先に焦げます。身が温まる前に表面が黒くなり、苦みが出る。
ぬるま湯でさっと洗い流してください。ゴシゴシやると身が崩れるので、流すだけで十分です。タレは付属のものを最後にかけ直します。
酒をふる
洗ったうなぎに、大さじ1程度の酒をふります。日本酒でも料理酒でもかまいません。加熱でアルコールが飛ぶときに身がほぐれ、独特のにおいも和らぎます。
料理酒には塩が入っている製品があります。味を細かく調整したいなら日本酒のほうが扱いやすい、という程度の差です。
タレは最後にかける
温める前にタレをかけると、必ず焦げます。火から下ろしてから、温かいうちにかける。これだけで見た目も味も変わります。
器具別の温め方
いちばん失敗が少ないのは、蓋つきフライパンに酒を少し入れて弱火にかける方法です。関東風・関西風のどちらでも成立します。皮の香ばしさが欲しいならトースターかグリル、真空パックなら湯煎が確実。電子レンジは速い代わりに、かけすぎると身が硬くなって崩れやすくなります。どの方法でも、最後に中心まで熱いかを確かめてください。
フライパン ─ いちばん失敗が少ない
迷ったらこれです。関東風・関西風どちらでも成立します。
- フライパンにアルミホイルを敷き、洗って酒をふったうなぎを皮目を下にして置く
- 酒を大さじ1〜2、うなぎの脇に回し入れる
- 蓋をして弱火で3〜4分。蒸気で温める
- 蓋を取り、水分を飛ばして1分
アルミホイルを敷くのは、皮がフライパンにくっついて剥がれるのを防ぐためです。関西風で皮をパリッとさせたいなら、最後の1分を蓋なしで少し長めに。
トースター・魚焼きグリル ─ 皮を立てたいとき
関西風に向いた方法です。アルミホイルに乗せて、3〜5分。表面が乾きやすいので、途中で酒を軽くふり足すと安全です。
グリルは火力が強いので目を離さないでください。焦げるのは一瞬です。タイマーを3分にかけて、鳴ったら一度見る。「もう少し」で放置した一分が、いちばんよく失敗します。
電子レンジ ─ 速いが崩れやすい
いちばん手軽ですが、いちばん失敗します。加熱しすぎると身がゴムのようになります。
酒をふってラップをふんわりかけ、500Wで1分から。足りなければ20秒ずつ足す。一度に長くかけないのが唯一のコツです。関東風のようにやわらかいものほど、レンジは短めに。
湯煎 ─ 真空パックならこれが確実
真空パックの商品なら、袋のまま熱湯に4〜5分入れるのが最も安定します。失敗のしようがなく、身も崩れません。皮の香ばしさは戻りませんが、ふっくら感は最もよく出ます。
袋が耐熱でない場合があるので、パッケージの表示を確認してください。真空パックでない蒲焼をこの方法で温めたいなら、耐熱の保存袋に移し替えてから湯に入れます。
炊飯器の保温 ─ 温め直しには足りない
ご飯を炊いた保温状態の釜に、ラップで包んだうなぎを乗せて10分ほど置く。火加減を見なくていいので手軽ですが、これは温め直しではなく、温かさを保つ方法だと考えてください。
保温はご飯を温かく保つための設定で、冷えたものを芯まで温め直すためのものではないからです。タイガー魔法瓶は自社の炊飯器の保温温度を「約72℃」と公表しています。厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルは、加熱調理食品についてこう定めています。「中心部温度計を用いるなどにより、中心部が75℃で1分間以上(中略)又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認する」。低い温度で長く置いても同等になりうる書き方ですが、確かめる対象は釜の温度ではなく、食品の中心の温度です。冷蔵庫から出したうなぎをラップに包んで乗せたとき、中心が何℃まで上がるかは、測らないと分かりません。
冷蔵や冷凍のうなぎは、フライパンか湯煎で先にしっかり温めてください。炊飯器は、温め終えたうなぎを配膳まで冷まさずに置いておく場所として使うのが妥当です。何人分もまとめて用意するときも、温めるのは別の方法で行います。
出典:タイガー魔法瓶 お客様サポート「保温温度は何℃ですか。」(2026年9月2日確認)。厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日付け衛食第85号別添/最終改正:平成29年6月16日付け生食発0616第1号)。後者は集団給食施設に向けた基準で、家庭に適用される規則ではありません。ここでは加熱の目安として引いています。
どれを選ぶか、迷ったときの表
| 器具 | 仕上がり | 目安 | 向く焼き方 | 失敗しやすさ |
|---|---|---|---|---|
| フライパン(蓋あり) | ふっくら | 4〜5分 | 関東風・関西風 | 低い |
| トースター・グリル | 皮がパリッと | 3〜5分 | 関西風 | 中(焦げやすい) |
| 電子レンジ | やわらかいが崩れやすい | 1分〜 | 関東風(短時間で) | 高い |
| 湯煎 | ふっくら・皮は戻らない | 4〜5分 | 真空パック | 最も低い |
| 炊飯器の保温 | 温かさを保つだけ | — | 温め直しには使わない | — |
失敗したくないなら湯煎かフライパン、香ばしさが欲しいならトースター。この二択で考えると迷いません。
どの方法でも、中心が熱いかを確かめる
表面が温まっていても、中心が冷たいままということがあります。厚みのある一尾や、冷凍から戻したうなぎで起きやすい。身のいちばん厚いところに箸を差してすぐ抜き、箸先が熱くなっていれば中まで通っています。ぬるければ、そのまま30秒から1分ほど続けてください。
厚生労働省のマニュアルが求めているのは「中心部温度計を用いるなどにより」中心部の温度を確認することで、これは集団給食施設に向けた基準です。家庭に義務があるわけではありませんが、確かめるべきなのが器具の温度ではなく食品の中心だ、という考え方は家庭でも同じです。冷蔵庫から出したばかりのうなぎほど、中心が遅れて温まります。時間だけを見て火から下ろさないでください。
白焼きも同じ方法でいい?
白焼きは蒲焼より扱いが簡単です。タレがかかっていないので洗う工程が要らず、焦げる心配もありません。酒をふってフライパンで蓋をするか、トースターで軽く炙る。塩とわさびで食べるなら表面を少し乾かすくらいがちょうどよく、醤油をつけるならふっくら仕上がるフライパンが合います。
酒をふってフライパンで蓋をして温めるか、トースターで軽く炙る。塩とわさびで食べるなら、表面を少し乾かすくらいがちょうどいいので、トースターが向きます。醤油をつけるなら、ふっくら仕上げるフライパンのほうが合います。
白焼きを蒲焼にしたいときは、温めてからタレをかけ、もう一度さっと炙ってください。タレをかけてから長く火にかけると、結局焦げます。
冷凍うなぎの温め方
冷凍のうなぎは、冷蔵庫でゆっくり解凍してから温めるほうが失敗しません。凍ったまま加熱すると、表面が焦げるころに中が冷たいまま、ということが起きます。急ぐなら真空パックのまま湯煎にすると、解凍と加熱を一度にできて身も崩れません。どちらでも、最後に中心が熱いかを確かめてください。
解凍してから? 凍ったまま?
結論から書くと、冷蔵庫でゆっくり解凍してから温めるほうが失敗しません。凍ったまま加熱すると、表面が焦げるころに中が冷たいままになりがちです。
急ぐときは、袋ごと流水に当てて半解凍にしてから、湯煎かフライパンへ。常温に長く置くのは避けてください。
その日に食べないときの保存
その日に食べないなら、買ったパックのまま冷蔵にせず、1食分ずつラップで包んで冷凍するほうが味が落ちません。タレは冷凍前に洗わず、そのままで構いません。
スーパーのうなぎはどこまでよくなる?
ここまでの手順は、スーパーの蒲焼にこそ効きます。タレを洗う、酒をふる、蓋をして弱火にかける。この三つをやるだけで別物になります。専門店の味になるわけではありません。うなぎ自体の質は変わらないからです。ただしパサついた皮と焦げたタレという、家で温めたときにいちばん起きやすい失敗はなくなります。
それでも専門店の味にはなりません。うなぎの厚みも、焼きの回数も違います。家で温め直すのは「専門店の再現」ではなく「スーパーのうなぎを本来の状態に戻す」作業だと考えるほうが、結果に納得しやすいはずです。
専門店の味を家で食べたいなら、持ち帰りという方法があります。うなぎめぐりが浜松鰻料理専門店振興会の加盟25軒を調べたところ、23軒が持ち帰りに対応し、20軒が全国発送も受けていました(2026年8月28日時点)。焼きたてを持ち帰れば、温め直しは湯煎か蓋つきフライパンで十分です。
もうひとつ、ご飯のほうも忘れないでください。うなぎだけ丁寧に温めて、ご飯が冷たいと台無しになります。丼に熱いご飯をよそい、その上にうなぎを乗せて少し蒸らすと、下からの熱で全体が馴染みます。丑の日の混雑を避けて家で食べる日でも、ここまでやる価値はあります。
タレが足りないときは?
付属のタレは、たいてい足りません。洗い流した分もあるので、なおさらです。醤油・みりん・砂糖を2対2対1で小鍋に入れ、ひと煮立ちさせれば代わりになります。酒を少し足すと角が取れます。小鍋ひとつで済むので、買い足しに走るより早い。かけるのは温め終わってからで、タレをかけてから長く火にかけると焦げます。
市販の蒲焼のタレを買い足す手もありますが、ご飯にかける分まで含めると、自分で作ったほうが量を気にせず使えます。余ったら冷蔵で数日もちます。
ひとつだけ注意があります。タレは温めたうなぎにかけるもので、うなぎと一緒に煮詰めるものではありません。煮詰めると身が硬くなり、タレも焦げます。
よくある質問
- うなぎを洗っても大丈夫ですか?
- 大丈夫です。表面のタレをぬるま湯で流すだけなら、身の味は落ちません。むしろタレの焦げを防げます。こすらず、流すだけにしてください。
- 酒は日本酒と料理酒のどちらがいいですか?
- どちらでも温まります。料理酒には塩が入っている製品があるので、味を細かく調整したいなら日本酒のほうが扱いやすい、という程度の違いです。
- 電子レンジだけで済ませても大丈夫ですか?
- 済ませられます。ただし加熱しすぎると身が硬くなるので、500Wで1分から始めて20秒ずつ足してください。一度に長くかけないことが唯一のコツです。
- 関東風と関西風で、本当に温め方を変えるべきですか?
- 変えたほうが持ち味は出ます。ただし蒸しの有無から導いた考え方で、当編集部で計測比較したものではありません。分からなければ蓋つきフライパンにしておけば、どちらでも大きく外しません。
- 温めたうなぎに山椒は必要ですか?
- 好みです。山椒は脂のしつこさを切る役割があるので、温め直して脂が回ったと感じたときほど効きます。先にひと口食べてから決めても遅くありません。
- 炊飯器の保温で温めてもいいですか?
- 温め直しには向きません。炊飯器の保温はタイガー魔法瓶の公表値で約72℃です。厚生労働省が集団給食施設に示している目安は「75℃で1分間以上、又はこれと同等以上」。低い温度で長く置く形でも足りうるので、温度の数字だけでは否定できません。ただし保温されているのは釜であって、ラップ越しに乗せた冷蔵品の中心ではありません。フライパンか湯煎で温めてから、配膳まで保温しておく使い方にしてください。
- うなぎの蒲焼きは冷凍保存できますか?
- できます。1食分ずつラップで包んで冷凍してください。タレは洗わずそのままで構いません。食べるときは冷蔵庫で解凍してから温めるのが確実です。
